ゲシュタルト療法
生物の持つ重要な性質であるホメオスタシス(どのような環境にあっても良い状態を維持しようとする性質)を重視します。
暑い時は汗をかき、体内の水分が減れば喉が渇くように、生体は常に生命活動を行っています。
ゲシュタルト・セラピーでは、生理的な面だけでなく、精神的な面でも同じようにホメオスタシスが作用すると考えます。
例えば、悲しい事が起きた時、涙が自然と溢れ泣くことで、高まった感情を発散させるとスッキリした経験はありませんか。
子どもは、これが自然にできますが、大人になると妨げられることが多くなってきます。
ゲシュタルト療法では、それを何故?と原因を問うのではなく、どのように妨げられているか?に気づきを促します。
何かに当てはめたり分析するのではなく、そのものになってみる、という実際に体験することで起こる気づきによって、真実の自己のあり方生き方を目指す、実存主義や現象学といった哲学的背景を持った心理療法です。
ゲシュタルトとは、ドイツ語で「かたち」「全体性」という意味です。
ゲシュタルト心理学の「図と地」という枠組みが、ゲシュタルト療法の重要な概念となっています。
どこに焦点を合わせるかによって「壷」に見えたり、「向かい合う二人の横顔」のようにも見えるという、ルビンの壺。
壷が見える時は、壷が「図」(前景)で周りは「地」(背景)に、向かい合う二人が見える時は、二人が「図」で周りは「地」となり、この現象を図地反転と呼びます。
私たちには、様々な欲求があります。(生存から自己実現に至るまで)
緊急な欲求が満たされると、それは後退し(地となり)新たに次の欲求が現れます。(図が現れる)
バランスの取れた状態の時は、図地反転が柔軟ですが、何か葛藤や心残りがあると、図が何であるかわからず混乱したり、周りが見えない状態となります。
ゲシュタルト療法は、いまここで実際に体験していることを表出していくプロセスによって、ゲシュタルトが完成し円滑に欲求の図地反転が起こるようになります。
言葉のやり取りだけに留まらない、実際に自分が体験することで気づきを得る経験的なセラピーです。
また、未解決の問題と言われる概念がゲシュタルト療法にはあります。
それは、新しいものから古いもの、少しの心残りから、とても大きく深いものまで。
生きている限り誰にでもあるものです。
過去、中断されたり完了できなかった出来事を完了させたいという思いが、図として残り続けることで、満たされない欲求は続いて注意を強く求めるようになります。
それが身体の不調や、問題行動として現れたり、過去に縛られることで生きづらさをうむのです。
ゲシュタルト療法は、人を単なる部分の寄せ集めではなく、全体性として捉えるので、普段は殆ど注意をむけることのない「地」の部分にある、潜在的な可能性や回復能力、エネルギーを重要視しています。
一般的に敬遠されがちな感情や思いなども、実験的にセラピーの場で経験してみることを提案することもあります。
また、身体感覚へのアプローチ法は、ゲシュタルト療法の代表的な技法の一つです。
心と身体を分けず、言葉だけでない非言語的に現れる身体の姿勢や症状などを重視します。
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座布団や椅子を使った、エンプティチェアのワーク
夢のワーク
夢の中に現れる人物や物や植物、動物など は、自分の人格の1部(フィギュア)と考えます。
気になる夢、いつも見る夢などを現在形で話していき、登場人物や物になりきって表現したり、対話させることで、夢のメッセージを掴み、自分自身の全体性へと近づいていきます。